ここでは、骨粗鬆症とはどのような病気なのか、日常生活への影響や予防方法、当院での取り組みなどについて紹介します。
骨粗鬆症とは
骨粗鬆症とは、骨の密度と質が低下し、骨がもろくなってしまう病気です。特に高齢者に多く見られ、わずかな転倒や衝撃でも骨折しやすくなります。
国内には1,000万人以上の患者さんがいると考えられており、高齢化によってさらに増加傾向にあります。

骨粗鬆症の怖さと日常生活への影響
骨粗鬆症の怖さは、骨折によって日常生活に支障が出ることです。骨折しやすい部位は、以下のとおりです。
- 背骨
- 手首
- 股関節
骨折するとその部分が痛くなるため、動けなくなります。特に、股関節を骨折した場合は回復が難しく、寝たきりのリスクが高くなります。
骨粗鬆症は日常生活に影響を与えるため、早めの予防と治療が重要です。
骨粗鬆症になりやすい人は?
骨量が減少する最も大きな原因は、加齢です。しかし、生活習慣や遺伝などさまざまな影響を受ける病気であることがわかっています。
骨粗鬆症になりやすい主な要因は、以下のとおりです。
- 高齢者:同じ骨密度であっても、年齢が上がるほど骨折リスクが高まる
- 閉経:早期閉経した人は骨折リスクが高い
- カルシウムの不足:カルシウムの摂取が少ないと、骨量が低下する
- 運動不足:継続的な運動が不足していると、転倒リスクが高まる
- タバコ:喫煙習慣がある人は非喫煙者に比べて骨折リスクが高い
- 飲酒:ビール中瓶2本や日本酒2合に相当する1日2単位の飲酒で骨折リスクが上昇する
- 遺伝:東アジア系の人は骨量が少なく、家族に骨粗鬆症の人がいる場合もリスクがある
- ステロイドの服用:ステロイド治療は骨密度を減少させる
- 低体重:BMIが低い人は特に大腿骨を骨折しやすい
- 過去の骨折:以前に大腿骨や上腕骨などを骨折した人は、新たに骨折しやすい
骨粗鬆症を防ぐには
骨粗鬆症を防ぐためには、栄養・運動・生活習慣の改善が基本です。
栄養バランスの良い食事を摂る
カルシウムやビタミンD、タンパク質を豊富に含む食事を摂りましょう。骨を強くし、新陳代謝のサポートが期待できます。
具体的な食品としては、以下のとおりです。
カルシウムを多く含む食品 | 牛乳、ヨーグルト、ししゃも、小松菜、わかめなど |
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ビタミンDを多く含む食品 | 鮭、さんま、しめじ、干ししいたけなど |
タンパク質を多く含む食品 | 鶏胸肉、牛肉、納豆、豆腐、チーズなど |
体重の負荷がかかる運動をする
骨粗鬆症を予防するために、体に適度に負荷がかかる運動を日常に取り入れましょう。過重負荷が少ない水泳よりも、骨に刺激が加わる以下のような運動がおすすめです。
- ウォーキング
- ジョギング
- 筋力トレーニング
軽いダンベルを持ったダンベルウォーキングなどは、自分の体重にやや負荷をかけたウォーキングとして効果的です。無理のない範囲で続けてみてください。
喫煙は控える
喫煙は、骨に悪影響があります。ニコチンはカルシウムの吸収を妨げるため、骨密度を低下させる要因になります。
また、ホルモンバランスを乱し、エストロゲンの分泌を減少させることで、骨粗鬆症のリスクを高めます。骨粗鬆症を防ぐために、喫煙は控えましょう。
骨質の重要性
骨粗鬆症の予防には、骨量だけでなく骨のしなやかさや内部構造といった骨質を整えることが重要です。
骨の強さの割合は、骨密度が7割に対し骨質が3割とされています。骨密度が高くても、骨質が悪いと骨折しやすくなります。
骨はカルシウムなどに加え、コラーゲンが柔軟性や衝撃の吸収に重要な役割を果たしています。骨粗鬆症予防のためには、カルシウムで骨量を増やすだけでなくコラーゲンを含むタンパク質を摂取し、骨質を高めることも重要です。
当院の骨粗鬆症への取り組み
当院では、骨密度と骨質の評価を行った上で、骨粗鬆症の予防と治療に力を入れています。骨粗鬆症は進行しても自覚症状がないことが多く、症状が見過ごされがちです。
しかし、進行するとわずかな衝撃でも骨折しやすくなります。骨折の連鎖を防ぐためにも、骨折リスクの評価は不可欠です。
TBS(骨微細構造)検査
当院では、骨質を評価できるTBS(骨微細構造)検査を実施しています。従来の骨密度検査だけでは判断できない骨の強度や、内部構造の状態まで確認できるようになりました。
より正確に骨折リスクを評価し、患者さん一人ひとりに合わせた予防や治療計画を立てることが可能です。
食事・薬物療法
骨粗鬆症の予防と治療には、適切な食事と薬物療法が必要です。当院では、整形外科と内分泌代謝内科の専門医が連携し、患者さんに適切な栄養指導や治療法を提案しています。
カルシウムやビタミンDなどを含むバランスの良い食事をサポートし、必要に応じて骨密度を維持・改善するための薬物療法も行います。
当院では、早期に治療を始めることで骨折リスクを減らし、患者さんが自立した豊かな生活を維持できるよう支援しています。