肥満は見た目の問題だけではなく、さまざまな病気と関連しています。ここでは、肥満に関する基本的な知識から具体的な治療方法まで解説します。
肥満とは
肥満は、単純に太っている状態を指します。必ずしも、病気を意味するわけではありません。肥満と肥満症の違いを知り、健康リスクがある場合は適切な治療を受けることが大切です。
肥満
肥満とは、身長に対して体重が重いことです。BMI(体格指数)は、健康診断にも用いられる基本的な指標となります。
- やせ過ぎ:BMI18.5未満
- 普通体重:BMI18.5~25未満
- 肥満:BMI25以上
- 高度肥満:BMI35以上
BMIが35以上になると高度肥満に分類され、生活習慣病のリスクも高まります。

肥満症
肥満症とはBMIが25以上で、肥満による健康障害が1つでもある、または健康障害を引き起こしやすい内臓脂肪の蓄積がある場合に診断されます。
肥満による健康障害は、主に以下のとおりです。
- 糖尿病
- 高血圧
- 脂質異常症
- 睡眠時無呼吸症候群など
肥満症は太っている状態ではなく、医学的な治療による減量が必要な状態です。BMIが35以上の高度肥満の場合、高度肥満症となります。
メタボリックシンドローム
メタボリックシンドローム(代謝異常症候群)とは、内臓脂肪が過剰に蓄積している状態です。BMIが25未満であっても、以下の2つの要件を満たす場合は該当します。
- 腹囲:男性85cm以上、女性90cm以上
- 血圧、血糖、血清脂質の3つのうち2項目以上が基準値を超えている
心筋梗塞や脳梗塞といった生命に関わる病気を引き起こす恐れがあるため、早期の予防と治療が必要です。
肥満の原因
肥満の原因は、食べ過ぎや運動不足だけではありません。現代の生活環境が大きく関わっているため、肥満が自己責任という考えは誤解といえるでしょう。
肥満を助長する原因は、以下のとおりです。
- 自家用車や公共交通機関の発展
- コンビニエンスストアの普及
- 食品加工技術の進歩
また、労働環境や生活の忙しさによるストレスも過食や運動不足につながりやすく、肥満の増加に影響しているとされています。
さらに、遺伝的な体質も関係していることがわかってきました。腸内環境やホルモンの分泌量には個人差があり、同じ食事や運動量でも太りやすい人とそうでない人がいます。
肥満は多くの要因が絡み合って生じるため、自己管理だけでは防ぎきれないこともあるのです。
肥満治療とは
肥満治療の目的や特徴について見ていきましょう。
肥満治療の目的
肥満治療の目的は、体重を大きく減らすことではありません。減量によって、健康障害を予防・改善することを目指しています。
特に、内臓脂肪を減らすことが効果的であり、糖尿病や高血圧・脂質異常症など肥満に関連する合併症のリスクを軽減します。
内分泌代謝内科で行う肥満治療の特徴
肥内分泌代謝内科では、患者さんの体質や生活習慣に合わせた総合的な治療を行っています。具体的には食事療法や運動療法、行動療法などが中心となり、必要に応じて薬物療法を組み合わせます。
また、リバウンド防止にも力を入れている点が特徴です。
肥満治療が必要な理由とメリット
肥満治療は、生活習慣病の予防と管理において重要です。
実際に肥満症の方に対して6カ月間の減量指導を行ったところ、体重の減少が大きいほど生活習慣病に関わる以下の数値改善も大きかったことがわかっています。
- 血糖
- 血圧
- 脂質
- 尿酸
- 肝機能
肥満治療は生活習慣病のリスクを総合的に軽減し、健康維持に大きな効果が期待されています。
肥満の具体的な治療
肥満の治療は、食事・運動・行動によるライフスタイルの改善と、医学的治療の両方からアプローチします。
食事療法
- バランスの取れた食事:栄養バランスの取れた食事を心がけましょう。野菜、果物、全粒穀物、タンパク質、低脂肪の乳製品を中心に取り入れることが大切です。
- 適度なカロリー摂取:カロリー摂取を抑えることが重要です。食事の量をコントロールし、過剰な間食を避けましょう。
1日の摂取カロリーの目安と適切な栄養バランスは、以下のとおりです。
- 25kcal×目標体重(kg)
- 炭水化物50~60%、タンパク質13~20%、脂肪20~30%
(タンパク質やビタミン・ミネラルを十分に摂取しつつ、糖質や脂質を抑える工夫も必要です。)
これらのカロリー制限は、個々の体重、身長、年齢、性別、活動レベルなどによって異なります。食事療法を始める前に、医師や栄養士と相談することが重要です。
運動療法
運動療法は、減量後の体重維持や生活習慣の予防にも効果があります。具体的な運動の目安は、以下のとおりです。
- 運動時間:1日合計30~60分(週150~300分)
- 運動の種類:ウォーキングなどの有酸素運動を中心に、筋力トレーニングやストレッチなどを組み合わせる
運動療法は、無理なく継続することが大切です。楽しんで取り組めることを見つけましょう。当院では、肥満の方や高齢者、下肢に疾患を抱えている方でも利用可能な全身運動機器を用いて有酸素運動を行うことが可能です。
行動療法
行動療法では、患者さんに食行動の問題に気づいてもらい、改善していくための支援をします。具体的な方法は、主に以下のとおりです。
- 食事の記録:食事の内容や量を毎日記録することで、摂取カロリーや栄養バランスを把握しやすくなります。
- 目標設定:小さな目標を設定し、それを達成することで自信をつけることができます。例えば、週に1回ジョギングをする、毎日500カロリーをカットするなど。
- 自己モニタリング:体重や体脂肪率を定期的に測定し、進捗を確認します。
患者さんが自分の行動に意識を向けることで、長期的な減量と健康的な生活習慣の確立を目指します。
薬物療法
肥満に対する薬物療法は、体重管理をサポートするために使用される薬を使う治療法です。食事療法や運動療法と併用することでより効果的です。薬物療法は医師の指導のもとで使用し、効果や副作用を定期的に確認することが重要です。
対象の患者さんは、県立総合病院と連携し、治療を行うことが可能です。
外科療法
体重が非常に増加している場合、胃の一部を切除する外科手術が行われることがあります。ただし、対象になるのは以下の方です。
- BMI(ボディマス指数)が40以上または35以上で、合併症(例えば、糖尿病、高血圧、心臓病など)がある場合。
- 他の減量方法(食事療法、運動療法、薬物療法)が効果を示さなかった場合。
- 心理的、精神的な問題がないこと。
当院では、整形外科専門医監修の運動プログラムや体組成計による数値の見える化により、食事療法と併せた効果的な減量プランを作成しています。
さらに、県立総合病院と連携し、薬物療法を含めた包括的な治療も行っています。肥満にお悩みの方は、当院までお気軽にお問合せください。